NMB48のレッツ・スタディー!小論文編 李始燕さん①
2020年度から始まった大学入試改革では、思考力や表現力がより重視されるようになりました。改革の先行きが不透明な中、どう勉強すればよいのか。NMB48のメンバーが書いた小論文を大手予備校・河合塾の講師に添削してもらい、ヒントを探ります。李始燕(イシヨン)さん(21)がお題を読んで挑戦しました。
論文のお題「おすすめの丼ものを紹介してください」
「李さんのおすすめの丼ものを紹介してください」(200字以内)
李始燕さんの小論文(横書き)
私のおすすめの丼物は天丼だ。
私は韓国人で、韓国に住んでいた時は、天丼を食べたことがなかった、
和食が食べたい時には、カツ丼をよく食べてた。
日本に住み始めてからは、ご飯を食べに回転寿司に一人でよく行った。
お昼限定の天丼には、自分が好きなえび天とイカ天等が入ってた。
あの天丼は安いだけではなく、美味(おい)しいので、おすすめだ。
安くて地味な丼物であっても私には最高の丼物だ。
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今回、李始燕さんには横書き・縦書きを指定せず原稿用紙をお渡ししました。原稿は横書きで届きましたが、「作文は縦書きが当たり前とされる日本との文化の違いがみえて興味深い」という加賀講師の勧めで、あえて書き直してもらわずそのまま掲載しています。次回は縦書きに挑戦してもらう予定です。(構成・山根久美子、阪本輝昭)
カツ丼と天丼の違い、論考してみては(河合塾・加賀健司講師)
出題と添削を担当するのは河合塾で小論文を指導する加賀健司講師です。
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なるほど、横書きの小論文ですね。韓国は横書き文化で、李さんが日本で触れるメディアもほとんどが横書きなのでしょう。次は縦書きにチャレンジしてほしいですが、それ以上に驚きました。李さんは既に日本語を自分のものにしている。型にはめた文法を使わず、自分の内から出てくる思いを素直に言葉にした。文章構成もわかりやすい。見事です。
日本語の文章としては十分成立しています。その上で小論文としての改善点を一緒に考えていきましょう。
李さんに関するいろんな情報がちりばめられた文章です。自己紹介としては申し分ないですが、小論文だとちょっと物足りない。読み進めると疑問が次々にわいてくるからです。
例えば、元々カツ丼が好きだったのに天丼に心変わりしたのはなぜ? その回転ずし店の天丼だけが好きなの? 「おいしい」とはどうおいしいの? など。味をわかりやすく説明する言葉など、全体的にもう少し具体性がほしい。どこかに絞って分析すると解消されます。
どうすれば良いか。わざわざ最初にカツ丼を提示したのだから、カツ丼と天丼を比較しても良かったですね。卵でとじて一体となっているカツ丼と、一つ一つの素材が独立している天丼。天丼は天ぷらだけで食べる、ご飯と食べるという味わい方もできるところが魅力だ。そんな分析をしても面白かったでしょう。
文章では、韓国人であることも紹介してくれています。韓国と日本の食文化を比較して天丼の魅力を論じる手法もあるでしょう。ただそれは僕が勝手に「韓国人だからこんな視点があるのでは」とレッテルを貼っているだけなのかもしれない。李さんが和食のカツ丼と天丼を挙げてくれているのだから、そこで比較するのが素直なのかもしれませんね。
自分が感じていることを相手に正確に伝えるには丁寧さが必要です。天丼を食べたことのない韓国の友人に天丼を薦める時、どう説明すると伝わるか。そんな視点で挑戦しても良いかもしれません。
おしゃべりさんな性格、字数の制約に苦心… 李始燕さん
あっ、日本では原稿用紙を縦書きに使うんですね……。私の生まれ育った韓国では、新聞も雑誌も横書きが主流。高校時代に小論文の授業も受けましたが、横書きでした。
私、おしゃべりさんな性格なので、書きたいことや表現したいことは常にたくさんあるんです。韓国にいたころの授業でも「あれも書こう、これも書こう」で、結局うまくまとまらないってことがよくありました。
今回のお題。書きたいことは次々浮かぶのに、規定の文字数に収めるのが難しくて、かなり悩みました。天丼を好きな理由、もう少し踏み込んだ方がいいのかな……と迷いつつ、省いてしまいました。でも、そこが今回表現すべきキモの部分だったんですね。
日本語は難しくて、日々勉強中です。だから、加賀先生に褒めてもらえて、すごくうれしい。同時に、限られた文字数の中で何を優先して書くべきかという取捨選択の大事さを学ぶこともできました。
カツ丼は韓国でも人気の食べ物です。でも、ちょっとお高くて、気軽に毎日食べられるようなものではない。味は日本のものより少し濃く、からいかも知れません。日本に来てからもカツ丼をよく食べていました。そんなとき、たまたま入った回転ずしのお店でメニューに「天丼」を見つけたんです。
韓国にも天ぷらはありますが、おやつの感覚に近く、衣も分厚いです。チリソースやケチャップなどをかけ、トッポギ(餅)と一緒に食べることが多いですね。だから、ご飯にのせて食べる天丼の存在には驚きました。でも、いざ注文すると、日本風の薄い衣はサクサク感が高く、一つの器の中でエビ、イカ、野菜……と様々な素材を楽しめて、かつ、タレと油が絡んだご飯との相性も最高でした。特に驚いたのは大葉の天ぷら。韓国では青物の野菜を揚げる発想はあまりないと思います。でも、食べてみるとこのうえなくおいしい。そこを書けばよかったんですね……。
もちろんカツ丼は今も好きで、海鮮を食べたいときは天丼、肉を食べて力をつけたいときはカツ丼――というように、気分に応じて選んでいます。日本は丼もののバリエーションがとても多く、「今日は何にするかな」と考えるだけで楽しいです。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル